これが決定版じゃね？とってもお手軽ドクター

２０１７年６月１３日（火）

ちょうど１年前の話です。

「次回１３日は手術の説明をするので、ご家族と一緒に来てくださいね。」

そう言われていたので、この日は夫に、会社を半休してもらいました。

私も午後は休めないので、

先生の話が終わったら、どこかで一緒にランチをして、

適当な駅で別れることにしていました。

病院へ向かう車の中でどんな話をしたのか、何を考えていたのか、

あまり覚えていません。

でも、いつも自分で運転して病院へ行っていたのに、

夫が横で運転していて、ヘンな感じがしていました。

初めて一緒に病院へいく夫に、

ここで受付して、エレベーターがこっちで、売店はあっち

などと案内しながら、呼吸器外科へ。

夫は、待っている間もスマホでゲームとかしていて、

私は「なんだかな～リラックスし過ぎー」と思っていました。

今思えば、案外夫も緊張していたのだと思います。

呼ばれて診察室に入って挨拶を済ませると、

友達の息子に似ている先生が話し始めました。

夫に向かって、ここまでの経緯と、私にしたような病気の説明、いくつかした検査の話をしました。

丁寧に、でもちょっと急いで。

気が付くと、看護師さんが一人、先生の後ろに座って、メモを取りながら話を聞いていました。

そういえば、前回も師長さんが診察室にいたな～。

そして、いよいよPETの画像を見ながら、説明を始めました。

「肺で光っている、これが肺のガンで、、」

お～～～、なるほど、、、　光るってこういうことか～

画像をスクロールしながら、

「で、ここにも光っているのがあって、、、」

「えっ！！」

「でも、これはガンじゃなくて、こうやって光っちゃうこともあるんだけど、これは違う。」

↑↑↑なんか説明がありましたが、忘れました。

「よかった～～転移じゃないんですね～～～」

「あ、これは違うんだけど　結果から言っちゃうと、、」

半身、こちらに向き直って

「転移はありました。」

夫も私も、声にならない声で　「え」　と言った気がします。

「２箇所、骨に転移していました。」

「ええ、えええ～～～～～～～～・・・・」

今度は、私が大きな声、　というより、　細く、悲鳴を上げてしまいました。

悲鳴を上げながら、

夫のほうを向きたいのに、しがみつきたいのに、

夫の顔が、見られない、、、

夫がどんな顔をしているのか、怖くて怖くて怖くて、

見られない・・・

そして、涙がこみ上げてきました。

固まったまま先生の顔を見ると、先生は神妙な表情で画像を示しながら説明をしてくれました。

一か所は、背骨のここ、〇番とか〇番のあたり、

もう一か所は、左の腰の蝶みたいな形をしている腸骨という骨で、、

「え、それって、どの辺ですか？」と聞くと、

先生は腕を背中に回して、肩甲骨の間の「この辺」、左の腰のあたりをさわって、「この辺」

と教えてくれました。

「痛みとか、ない？」

「ないです！全然、、、」

「、、そう、痛みがあってもおかしくないんだけど、、」

「・・・・・・・」

そして、私たちのほうに向きなおって、ゆっくりと、

「今日は、ご主人も一緒に手術の説明を聞くつもりで、来ていただいたと思うんですが、

先ほども説明した通り、遠隔転移が２か所なので、先日１（仮）と言っていたステージは、４になります。

と、いうわけで、全身に癌細胞が巡っていると思われる状況で、残念ながら手術はできません。」

と言いました。

がーーーん

・・・わたし、死ぬんだ～・・・

涙が、止まらなくなっていました。

いろいろ聞かなきゃいけないのに、、、、

いかん、先生
も看護師さんも、つらそうな、困ったような顔をしている、、、

すると、夫がハンカチを横から差し出してくれました。

そのとき一瞬、怖くて見られなかった夫が視界の端にいて、

顔をむこうに向けて、鼻をすすって涙を手で拭っていたように見えました。

出会ってから32年、一度も、夫が泣くのを見たことがありませんでした。

ごめーーーん、ほんとにごめんと心の中で夫に謝りました。

なんだか、ものすごく怖かった。

病気が、なのか、死ぬことが、なのか、何が怖かったのかわからないけれど、

今思うと、夫と離れ離れになってしまう、それが怖かったのかもしれません。

「それは、ほかの病院へ行っても同じということですか。」

「もちろん、セカンドオピニオンは受けてもらっていいし、書類や画像もすぐに揃えます。」

「でも、標準治療では、この画像を見て手術する病院はない、ということですよね。。。」

「その通りです。」

夫が冷静な声でそんなやり取りをしていました。

そして、先生は私にむかって、

「今後は内科に戻ってもらって、抗がん剤で治療ということになります。

でも、もちろん、治療をしないという選択もある。

うたさんとご主人の希望に沿った形で、これからのことを考えていくことになります。」

と言いました。

「は～～そうなんだ～～～、、、、」

以前、私はガンにならないんだろうな、と思いつつも、

万一ガンになっても、抗がん剤治療はしないと考えていました。

ちょっと前まで、人を殺すのはがんではなく、抗がん剤だと思っていました。

でも、イレッサの登場以降、抗がん剤治療が変わってきているという話も知っていました。

まさか、自分が抗がん剤治療治療をするべきか、考える日が来るとは、、、

あんなに抗がん剤治療治療は受けない！と言っていたのに、、、

「先生は、抗がん剤治療をした方がいいと思いますか？」

思わず聞くと、

「うたさんはまだ若いので、ぼくは、治療を受けたほうがいいと思います。」

と、きっぱり答えてくださいました。

涙も止まって、

次にやるべき事が、小さく見えた気がしました。

そのあと、「ところが、、、、」　と申し訳なさそうに

「まずは内科の、最初に会った梅ちゃん先生と話してもらおうと思うんだけど、実は今週学会に行っていて、予約が来週の木曜日（２３日）になっちゃうんですよ～、１０日も先になっちゃって申し訳ないんだけど、、、」

それは、もう、仕方ないというか、、、心と頭が混乱していて、この際、冷静になる時間ができていいかも、、、と、了解しました。

あのとき、他の先生でもいいので、もっと早くしてほしいとダダこねれば、

有名な名医とか、スーパードクターとかになったかなぁ、、(笑)

「じゃあ次は２３日、手術するはずだった日だね、、、ほんと、今日は手術できると思って来ていただいたのに、申し訳ない、」

「いえいえ、それはもう、先生のせいではないので、、、」　といいながら、

手術日を早めてくれたこと、

尽力してくださったコーディネータの先生に対しても、

できるだけ丁寧にお礼を言って、診察室を出ました。

そのとき、はじめて夫の顔を見ました。

お互いに何も言えず、でも待合には大勢人がいて、そこからいなくなりたくて、

どうしたらいいのか、混乱していました。

でも、はたとトイレに行きたいことに気が付いて、トイレに行き、化粧を直して夫のところに戻ると、

先ほど先生の後ろで話を聞いていた看護師さんがいました。

前回いろいろ話をしてくれた看護師長が休みで、代わりに話をということでした。

立ったまま、何か話をしました。

仕事はすぐに辞めちゃダメ、と言われた気がします。

そのほかにも、体調のこと、次の診察までの過ごし方、など、いろいろ聞いた気がします。

でも、全部飛んでしまいました。

会計を待つ間、このあとどうしようか、と話をして、

でも二人とも頭が働かず、とにかく家の近所のショッピングモールまで帰ることにしました。

やっと車に乗って、二人になったら、私はまた泣いてしまいました。

夫に向かって　「ごめーん、ほんとにごめん」　と謝りつづけ、

「私、これから株で儲けて、遺産残すから！」とか訳のわからないことを言い、

夫は、「お、それいいね、頼むよ」と笑っていました。

でも、「再婚していいよ、若い奥さん、頑張って探しなね」というと、

「それはどうかな～」と言って、苦笑いしていました。

モールに到着して、あまり時間もないので、フードコートでラーメンを食べることにしました。

平日ですいているフードコートで、

私は涙をこらえながらしゃべり続け、夫は無言で、必死にラーメンを食べました。

「おいしいね」と言いながら、まったく味がしませんでした。

そのあと、別れてそれぞれ仕事に行きました。

これが、私の２度目の告知のお話。

１度
目の告知のとき、ショックは受けたけど、

治ると思っていたし、冷静に受け止めることができました。

何とかしなくちゃが先で、泣くこともありませんでした。

でも、２度目の告知は、きつかった。

この日からしばらく、一人でいるとき、

気づくと涙が流れていました。