結論:ガラガラは楽しい

  

Greatchain

September 7, 2018

 

今年亡くなったジャーナリスト、ロバート・パリ―の主宰していたサイト、Consortium.comに、「ロシアの、アメリカ政治への本当の干渉」という記事が出ている。最初に「もしロシアがアメリカに内政干渉しようとしているとすれば、それは、アメリカの政治システムを変えるためではなく、アメリカがロシアを変えようとするのを、やめさせるためだ」とある。

 

この要約にすべてが言い尽くされ、論文は読む必要がない。これが現実であるのに、アメリカは、「ロシアが我々を支配しようとしている。これを倒さねば大変なことになる」と騒ぎ、そう言い続けてきた。言うだけでなく、米‐NATO軍がロシア国境に進駐して、銃口を彼らに向けて戦闘準備態勢を取ってきた。その背後にある哲学（理屈）は、アメリカは世界に冠たる国家で、指導者なのだから、アメリカの言うことを聞いてさえいれば、世界の平和と繁栄は約束されるというもので、数年前のオバマの国連演説でも、堂々とそれを言い、前稿のジョン・マケインの、海軍アカデミーのスピーチでも、同じことを言っている。

 

これはアメリカ帝国の愚劣な思い上がりであるが、この法的にも道徳的にも、犯罪でしかない政策を、正しいと思っている人々が、いまだにわが国にも存在し、主流メディアはその立場を取っている。そして、これが「政治的に正しい」politically correctことになっている。

 

ロシアのプーチンは、「我々に、あなた方の哲学を押し付けるようなことは、やめてくれ。我々の主権を認め、共に協力してこの世界をよくしようではないか」と、ずっと変わらず言ってきた。にもかかわらず、アメリカはついに聞く耳をもたなかった。そこでトランプ大統領の “ロシア癒着” という問題をでっちあげることによって、ますます両国の溝を深めることになった。そこでプーチンは、ヘルシンキでトランプと会うことになったとき、初めて腹の底から怒った。これについてはこの記事を再読されたい。改めて説明はしない。要するに「私とトランプは、双方のためを思ってやっているのだ。いったい君たちは死にたいのか！　馬鹿者ども！」ということだった。

 

そこでもうひとつ――このサイトの最高傑作として前に紹介した、The Sakerの論文を思い出していただきたい。 この論文は、プーチンの賢明な平和主義的軍事戦略を、フロリダ州に生息する世界最強のガラガラ蛇「ダイアモンドバック」に喩えている。ところで今、ロシアでは、戦わずして戦争をやめさせることのできる、孫氏の兵法のような、ダイアモンドバックの電子戦略版が開発されたらしいことが、ネット上に出回っている。これを疑う者も多いが、次に訳す論文を見れば、これはフェイク・ニュースではありえない。これは、それを裏付ける信頼できる論文である：——

 

ロシアの電子戦争システムが、シリアのアメリカ軍を動けなくしている

 

モスクワのオンライン分析ウェブサイトであるVzglyadに、４月26日発表された論文が、アメリカのものを含め、ソースを明らかにした上で、このオプションがどのように働くかという予想を明らかにしている。これは非公式の英訳である。

34

シリアの実戦で十分テストされたEW（電子戦争）システム

　　　　　　　　　　By Andrei Rezchikov and Nikita Kovalenko

 

 

「今日、我々の未確認の敵の行動のために、シリアのわが軍は、この地上で最もひどく攻撃されている電磁波環境におかれている」と、アメリカの将軍は言った。このような敵が、シリアで、電子戦争の方法を用いているロシアであることは、明らかである。ロシアの電子戦争システムに、どんなことができるのだろうか？　また米軍は、なぜそれを、それほど恐れているのだろうか？

 

米軍の特別作戦コマンドのヘッド、レイモンド・トマス将軍は、2018年の非公開シンポジウムGEOINTにおいて、敵は、シリアの米軍航空機のシステムを故障させている、と嘆いた。彼は「敵」とは誰かを明確にしなかったが、現在の電子戦争の状況を、「世界で最も攻撃的」と呼んだ。しかし、発表のドライブは、将軍を引用して、これがロシアのことである自信を表明している。

 

左：2018年GEOINTで話すRaymond Thomas将軍（4月22～25日のこと）。彼のスピーチを聞き、4月25日のドライブ・レコードを読まれたい―　　右：ドライブの、発表されたロシアのKrasukha-4電子戦争システム。

 

「彼らは我々を毎日テストし、我々の通信機能を抑え込み、我々の銃撃サポート航空機AC-138を無能にしている」と、レイモンド・トマスはつけ加えた。

 

それより早く、NBCテレビ・チャンネルは、匿名の米高官たちを引用して、ロシアが、シリアの米ドローンの無線信号をブロックし、これによって米軍の作戦行動に重大な影響が生じたと報じた。ロシア軍は、「東グータにおける一連の化学攻撃と言われるものの後で」アメリカのドローンに干渉をし始めたと言われている。

 

雑誌Arsenal of the Fatherland（祖国の兵器庫）の編集者Alexei Leonovは、電子軍事行動の使用に関して、シリアに、これまでになかったような状況があるとは思わない、と言っている。「実際は、それは、アメリカ人が弱い敵と戦う習慣に、影響を与えていない。1991年以来、アメリカはすべて、EWシステムが非常に弱いか、全くもたないような国との軍事紛争を導いてきただけだ」と、彼はVzglyadに語った。

 

レオノフの査定では、アメリカは今、EWシステムの効率では、明らかにロシアに後れを取っている。特にそれは、アメリカがこのような技術に、しかるべき注意を払うのをやめたからだ。ペルシャ湾の最初の戦争があった1990年代には、アメリカ人は積極的にEW装置を用いたが、それは当時、イラク軍がかなり発達していたからだった。

 

しかし彼らは油断をし始め、それ以来、航空部隊を防衛するためには、F-18 機に有効なEWシステムだけを開発してきた、とレオノフは言う。「ロシアはじっとしていなかった。そして今、アメリカ人は、我々のEWシステムを観察した後でも、自分たちは世界で最高の仲間に入っていると思っている」と、彼はつけ加えた。

 

「アメリカ人の通信手段の特徴は、彼らが “ｋバンド” で作業をすることだ。我々はこのレンジ（範囲）を知っている。それでこのレンジは、EWシステムの中で信号を故障させ、すべての通信をキャッチできるように、構成を変えられたのだ。その上、シリアのアメリカ人は、主として空中輸送のEWシステムを使うが、ロシアでは地上のシステムとして配置されている。地上のシステムは、エネルギー補給の理由で、常に、空中のものより電力が大きく強力なのだ」と、この情報源は言った。

 

このことは、元米軍電子戦争担当ヘッド、ローリー・バックアウトが長いこと言ってきたことである。「我々の最も深刻な問題は、通信の抑止された状態で、数十年、戦っていないために戦い方を忘れていることだ。我々は、戦術とか技術とか手順といったものの実行を知らないだけでなく、通信手段のないところで、敵対行動を行う準備さえしていない。」

 

トマス将軍の言明の後、ロシア連邦評議会は、モスクワは、シリアのアメリカの航空機の電子システムの故障に何の関係もないと言った。「私は、敵というのが誰のことか知らない。しかしロシアはこれとは何の関係もない。こういったことは根拠のないことだ」という返答っを、RIAノボスティ通信は、エヴゲニー・セレブレニコフ副議長から得た。

 

しかし、モスクワが、アメリカ軍の装備の障害へのかかわりを、否定したからといって、ロシアがシリアで、電子軍事行動を用いていないということでは、全くない。特に、Khmeimimのロシアの航空基地を攻撃しようとした、最近のドローン攻撃をはね返すために、Pantsir-S対航空機ミサイルや銃コンプレックスも一緒になって、EWは広範囲に使われた。イズベスチア紙のあるソースによれば、約10キロ離れた所に、ある危険を発見した後、電子軍事行動システムは、ある範囲内のGPSを沈黙させ、ドローンのナビゲーションとコントロール・システムを無能化した。

 

イギリスの、ロシア軍事専門家Roger McDermottは、ロシアの電子軍事行動が、ドローン攻撃をはね返す、すぐれた能力をもっていることに注目している。彼は、ロシアが、電子戦争の能力を最大化し、目を見張る成果をあげていると確信している。彼によれば、NATOとは違って、ロシアは、軍事司令、通信、情報、宇宙空間、サイバー及び電子戦争を、一つに統合させている。

 

1月初めに、自家製の爆弾を載せた13機のドローンが、ホメイミム空軍基地と、タルトゥスの海軍基地を攻撃した。そのうち７機はPantsir-Sによって破壊され、他の６機はEWユニットによってインターセプトされた。また、一部の専門家の想定しているところでは、最近の米ミサイルのシリア攻撃の際には、これを抑止する無線‐電子の方法が取られ、いくつかのクルーズ・ミサイルがインターセプトされたため、多くのミサイルは全く標的に到着しなかった。しかし同時に、軍事専門家のある者はこれを疑っている。それは、これらトマホークは、すぐれた複雑な、抑止のシステムをもつからである。

 

ロシアはシリアで、どんな種類の、電子戦争手段を使っているのだろうか？　これについての詳細な情報は、公開報道されることはない。なぜなら、このテーマをめぐって秘密が増加したからである。しかし新聞はしばしば、断片的な情報を手に入れることがあり、その多くは、シリア人のブロッガーで、ロシアの兵器の例を、繰り返し撮影している人々のおかげである。・・・・・・

 

（以上、論文のほぼ半ばだが、我々にとって肝要な部分はほぼ取り込まれている。）

 

PDF: