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「なつぞら」 第45回
第8週 「なつよ、東京には気をつけろ」
咲太郎は女たらし?人たらし?・・・の巻
※無断転載対策のため、不本意ですが、
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<クラブ・メランコリー>
(ステージで歌う煙カスミ)
なつは、東京・新宿にいました。
**********
<クラブ・メランコリー>
カスミ) ねえ、もしかして、あなたは…?
なつ) お久しぶりです。
雪之助) いや~いかった!
あなたの歌声はね、素晴らしいです!
カスミ) どうもありがとうございます。
雪次郎) すいません、
お酒に酔ったみたいで…。
カスミ) ああ…いいんですよ。
あなたは確か、咲坊の…。
なつ) はい。奥原咲太郎の妹です。
兄が今、どこにいるか知りませんか?
カスミ) 知らないわね。
なつ) そうですか…。
カスミ) ちょっと、
お酒につきあってくれる?
なつ) えっ?
**********
<繁華街の路地裏>
雪之助) 寒くないですか?
そんな格好して。ちゃんと挨拶…。
(おでんのお店に入るカスミ)
カスミ) あっ、こんばんは。
亜矢美) あらカスミねえさんいらっしゃい。
カスミ) はいこっちよ!
お客さん連れてきたのよ。
亜矢美) まあうれしいお客様。
いらっしゃいませ、アッハハ…。
いらっしゃい。
なつ) おばんです。
亜矢美) あっ…おばんです、
ハハハハ…。どうぞ。
なつは、亜矢美さんとの出会いの
意味をまだ、知りませんでした。
**********
<おでんの店・風車>
雪次郎) 父ちゃん…もうやめれって。な。
雪之助) 心配すんな雪次郎。
ここどこよ? 新宿だべお前…。
雪次郎) もう分かったって…。
亜矢美) 北海道からじゃ遠かったでしょう。
なつ) はい。
亜矢美) おでん、好きなの言って。
カスミ) 遠慮しなくていいのよ。
私のおごりだからね。
亜矢美) じゃあね、お勧めの
このばくだん、食べてよ。
なつ) すいません。
雪之助) あ~私熱かんにして下さい。
亜矢美) お~はいはい。
雪次郎) それはもう、
出さなくていいですから。
亜矢美) 出しますわよ。商売商売!
雪次郎) え~…。
亜矢美) レミちゃんも好きなの言って。
レミ子) はい。それじゃ…はんぺん大根
ちくわぶコンニャク卵ツミレがんもどき!
亜矢美) 分かんないけど全部入れときます。
レミ子) あ~お願いします。
亜矢美) 今日は、ステージの帰り?
カスミ) そう、クラブメランコリー。この3人
はね、私の歌を聴きに来てくれたのよ。
亜矢美) おねえさんの古くからのお知り合い?
カスミ) 人を捜して、私を訪ねてきたのよ。
亜矢美) あら、人捜し?
なつ) はい。
カスミ) 子どもの頃に生き別れた、
お兄さんですって。それがね、
と同じ、
ムーランルージュで働いていたんだって。
去年の夏ごろよね、捜しに来てたのは、
そのお兄さんを。
なつ) はい。その時、兄には会えた
んですけど、また今はどこにいるか
分からなくなって。
カスミ) だからね、今度は、お兄さんの
そばで暮らすために、東京に出てきた
んだって。
なつ) いや、兄にとっては迷惑になる
だけかもしれませんけど…。
カスミ) 名前、何ていうんだっけ?
なつ) 奥原なつです。
あっ、兄の名前は奥原咲太郎です。
カスミ) ムーランルージュじゃ
咲坊って呼ばれていた子なのよ。
亜矢美) はい、熱かん…。
雪之助) あ~…。
雪次郎) やめれって、いやもう…。
あっ、もう…。
雪之助) なみなみ…ついで下さい。
雪次郎) いやもう、あっ、もう…。
雪之助) あのね、女将…女将あの、
この子はね、なっちゃんね、本当に
苦労したんだわ。
亜矢美) そうなの?
なつ) おじさん、いいって…
そったらことないから。
雪之助) ある。あるべ! 子どもの頃によ、
北海道の、牧場に預けられてさ。これが
ね、そこにいたのはなんとまあ、人の苦
労を、苦労とも思わねえようなおっかな
い開拓者のじいさんでな。牛のね…牛の
乳搾りできなきゃ、学校に行くなって言わ
れてたんだよ。
雪次郎) いやもういつの話してんだべ。
雪之助) なっちゃん、なっちゃん…
あれだべ、あの~ほら、つらくなってよ、
牧場飛び出したことあったべ?
なつ) おじさん…。
雪之助) あったべ!
なつ) あったけど…。
雪之助) あったべ!
ほらあの、東京のお兄さんに会いたくな
ってよ、飛び出したことあったべや?
ところが…ところがですよ女将…女将!
亜矢美) ん…はい?
雪之助) その兄さんってのがね、
これ会ってみたらもうこれ、
ろくでもねえやつでな…。
亜矢美) あら…。
雪之助) 警察のね、
やっかいになるようなやつでな…。
雪次郎) もうやめれって! なっちゃん
に失礼だべ、そったらこと言ったら!
なつ) 別にいいから。
雪之助) なっちゃんあれだよな…
お兄さん川村屋に借金残してんだべ?
その借金返すためにね、なっちゃんは
皿洗い川村屋でやってるんです。
なつ) いやおじさん、それは違うっしょ!
雪之助) そういうことにもなるべさ。
おい雪次郎! お前支えてやれ!
雪次郎) うん。
雪之助) 分かったか?
雪次郎お前…。おっ…!
(椅子から転げ落ちる雪之助)
なつ) あっ! おじさん…? えっ…?
雪次郎) 支えなきゃなんねえのは
そっちだべよ…。しょうがねえな
もう…飲み過ぎだべ弱えのに…。
なつ) あっ、すいません、もう帰ります。
亜矢美) 北海道?
なつ) いや…川村屋です。
寮があるんで…すいません、
ごちそうさまでした。
亜矢美) 気を付けてね。
なつ) はい。ごちそうさまでした。
雪次郎) すいません、
ごちそうさまでした。
雪之助) 寒い…寒い…。
(一緒に店を出て、なつの腕を掴むレミ子)
なつ) えっ…?
レミ子) 咲ちゃんにさ…。
なつ) 咲ちゃん?
レミ子) お兄さんに、
私にも返すように言ってよ。
なつ) 兄は、あなたにも
お金を借りてるんですか?
レミ子) お金じゃない…。私の心よ。
なつ) はい?
レミ子) 心の操!
真心を一晩、貸したままだから。
返してもらうわよ。
なつ) さっぱり分かんねえ…。
**********
<店の中>
カスミ) ごめんね。
亜矢美) 知らせに来てくれたのね、
おねえさん。
カスミ) あとは、亜矢美ちゃん次第よ。
**********
<川村屋のアパート>
(布団を運んでくる佐知子)
なつ) すいません佐知子さん。
佐知子) 何が?
なつ) せっかく一人で
部屋を使ってたのに…。
佐知子) 私も最初は相部屋だったのよ。
だから気にしないで。
なつ) 佐知子さんみたいな人でいかった。
佐知子) 私も。あなたでよかったわ。
困ったことがあれば、何でも言ってね。
なつ) ありがとうございます。
佐知子) 咲ちゃんからは、何も、
聞いてない…わよね? 私のこと。
なつ) 咲ちゃん?
佐知子) そりゃ、言えないか…。
なつ) えっ?
**********
<共同洗面所>
(歯磨きをしているなつ)
雪次郎) あっ、なっちゃん、早えなあ。
なつ) 遅いよ。
どうしても早く目が覚めちゃって。
布団の中で我慢してたんだから。
う~ん、牛が恋しい…。
雪次郎) そうか。
なつ) おじさん大丈夫?
雪次郎) さっき目覚めて、
二日酔いで苦しんでるわ。
水もってこいって。父ちゃん…。
**********
<なつの部屋>
なつ) あっ、おはようございます。
佐知子) おはよう。早起きで偉いわね。
なつ) いや、癖なんです。
(布団を畳む佐知子)
なつ) あっ、自分でやります…。
佐知子) あのさ…。
なつ) はい?
佐知子) これ、少ないけど…
お兄さんに渡してくれる?
なつ) えっ?
佐知子) 少しでも足しになればと思って。
なつ) えっ、何ですか? これ。
佐知子) お金よ。
なつ) えっ、なしてお金を…?
佐知子) 力になりたいからでしょ。
私からじゃ遠慮して受け取って
くれないかもしれないから。
あなたから渡してあげて。ね。
なつ) あっ、あの…
兄と、何かあったんですか?
佐知子) ハッ…やだ…まだないわよ。
なつ) まだ…? えっ、もしかして兄は、
あなたにも、借りがあるんですか?
佐知子) 借りなんてないわよ。
私と咲ちゃんは、同志だもの。
なつ) 同志?
佐知子) この新宿で、ずっと一緒に、
強く生きていこうって誓ったの。
ハッ…やだ…。
なつ) やだ…。
兄ってどんな人なんでしょう…。怖…。
**********
<路地裏>
(「風車」の表で踊りながら掃除する亜矢美)
男性) こんにちは。
亜矢美) はいご苦労さん。
**********
(店でおでんの仕込みをする亜矢美)
(戸が開く音)
咲太郎) ただいま!
亜矢美) 咲太郎…。
咲太郎) 何だよしけた面して。
相変わらず不景気か?
神武景気もここまでは届かないか。
ま、元気出しなって母ちゃん。
亜矢美) あ…おでん、
出来たばっかりだけど、食べるかい?
咲太郎) うん。
風車のおでん久しぶりだなあ。
亜矢美) あんたまた、
新宿に戻ってきたの?
咲太郎) ここしか帰る所がないだろ。
亜矢美) で、今は、何やってんの?
咲太郎) 今?
今は新劇の劇団手伝ってんだ。
亜矢美) 新劇?
(回想)
(舞台袖から花びらを降らせる咲太郎)
咲太郎) 昨日が千秋楽だったんだ。
ちっとも儲からないけど、
うん…役者はいいんだよ。
あっ、ほら、ムーランルージュも最後の
方は新劇みたいだって言われてたろ?
亜矢美) うん…。やっぱりそっか、
まだ知らないか…。
咲太郎) えっ?
亜矢美) それで帰ってきたって
わけじゃないんだ。
咲太郎) 何の話だ?
亜矢美) (ため息)
あんたの、妹、新宿に来てるよ。
北海道から。
咲太郎) えっ、なつが!
亜矢美) あんたを、捜してる。
今度はこっちで、
暮らすために出てきたらしいよ。
咲太郎) 何で? 今さら俺なんか…。
亜矢美) あれは…追い出されたんだね。
咲太郎) えっ、北海道をか?
**********
<川村屋の厨房)
杉本) まず卵を、こうやって、白っぽく
なるまで泡立てる。それから、さっき
の粉ももう一回振っとけよ。
雪次郎) はい! 分かりました!
(皿洗いをしているなつ)
光子) なつさん。
なつ) はい。
光子) これから忙しくなるから、
今のうちごはん食べておきなさい。
なつ) はい。
**********
<風車>
咲太郎) 俺のせいか…!?
俺のせいでなつは、
一人で東京に来たのか…!
亜矢美) 妹さんはね、北海道で、
それはそれは、苦労してきたらしいよ。
咲太郎) いやそんなことはないだろう!
去年の夏に会った時は、幸せだって言
ってたよ。一緒にいたおばさんだって…。
亜矢美) お前がそう言わせたんだろうが。
(咲太郎が持ってきた日本酒を飲む亜矢美)
**********
<厨房>
(賄いを食べながら、働く雪次郎を
ノートに描いているなつ)
男性) 熱いよ、熱いよ…。
何だまだ泡立て終わらないのか。
早く粉も振って、
バターは湯煎にかけとけよ。
雪次郎) はい…。
なつよ、何だか咲太郎に
勘違いされているみたいだけど、
もうじき、会えるかも知れないよ。
**********
鈴木杏樹が出てると言われても分からなか
ったんだけど…。回想の挿入劇の女優さん
だったのね! 舞台メークのせいでまったく
わからなかったよ~! 男性の役者の方は
またも真田丸関係(栗原英雄)だったそうで。
ただでさえ、元朝ドラヒロイン・比嘉愛未、山
口智子と濃い~キャスティングだというのに、
あれこれぶっこんでくるもんだから…カオス
だわ主役が霞むわ…。さすがのすずちゃん
でも、あんなに大物ばかりに囲まれてしまう
と、いろいろと持っていかれてしまうよね…。
咲太郎はあのルックスだし、モテるだろうけ
ど、女たらしなのか人たらしなのか…。どっ
ちにしても、同じDNAを持った兄妹だなあと
しみじみ思ってしまうわけで。とはいえ色恋
沙汰は怖いから~。咲太郎よ、気をつけて。
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ブログも残すところあとひとつ、本日夜には三味線文化譜を掲載しますが、先にご挨拶させて頂きます。
今年の破沙羅記念日も今日で終わりです。
お読み下さった方、ありがとうございました。
毎年この三日間を破沙羅を想うよすがにしようとせっせとブログを書いて参りましたが、さすがにネタ切れです。来年はもう書くことがないかも。
昨年の二次創作ですべてのキャラクターを書き終え筆を置いたとき、
「あたしをお忘れでないかえ?」
と出てきた方がいて、今年もお話を書くハメになりました。
義経は何故その場にいる者すべての心を捉える舞を舞えたのか?との自分の疑問から出発した話ですが、実は裏設定がありまして。作中で阿国とされている女性は出雲の阿国かもしれないし、阿国を彷彿とさせる別の女かもしれない。恋人は名古屋山三かもしれないし、別の男かもしれない。ひとつ言えるのは、彼女ははるか昔から舞の道を究めんと、人外となって現代まで長い時を生き続けているということ。
前作のラストの義経の言葉「力を貸してくれた者たちにお返しせねばならぬ」と、各人の体から光の玉が抜け出し空へと還っていく描写をしましたが、破沙羅草紙の世界と現世はある種の平行世界で一部が繋がっているんです。破沙羅のキャラクターの源となる義経や弾正が代々木に降臨したのと平行して、物語世界の中に大輔さんや染五郎さんの魂の一部が飛んでいき彼らに宿った。阿国はそのどちらの世界にも存在するのです。肉体は現世に、魂は破沙羅の世界に、と分かれ分かれになって。
阿国は長い時を生き、かつての恋人が転生するのを待ち続け、ただ共に舞う。阿国が破沙羅草紙の世界に来たのはひょっとしたら現世の現代に生きるその男の心の奥底にある「義経を手助けしてほしい」との意を汲んだのかもしれません。男には前世の記憶はなく阿国のことがわからないのだけど。
「脱出」のラストは阿国がいつもの陽気な口調で「ちょっとひどいじゃないか。あたしを置いていこうってのかい?」と義経の体に戻ってくるはずでした。ところが彼女、作者に断りもなく成仏しちゃったんですね。これは漫画「ヒカルの碁」の藤原佐為が神の一手を打った直後に昇天したことに通じます。義経の体を借りて会心の舞を舞った阿国は長い生を閉じ輪廻の理の中に戻ります。
「桜風」で男が「来世はいっしょの時を生きよう」と言ったのは、現世での阿国であった者の肉体の死に喚起されて記憶を取り戻したのでしょうか?ご想像におまかせします。さて、彼は誰なんでしょう?ふふふ。
物語を書いている間、ずっとBGMにしていたのが長唄の「鞍馬山」です。
長唄「鞍馬山」
義経が鞍馬山に稚児として預けられていた少年時代の話(歌詞の中では牛若丸となっているが、実際には遮那王と呼ばれていた頃)
人づてに自分が源氏の御曹司であると知らされた牛若丸は、平家打倒を心に誓い、夜な夜なひそかに剣術修行に励む。
剣術修行の相手になるのは、鞍馬山に棲む大天狗の僧正坊と、その手下の木の葉天狗。
闇夜に木太刀の音がこだまする。
牛若丸は空を切って打ちかかる小天狗の木太刀を払いのけて応戦する。目にもとまらぬ技と技。
勝負ついたかと思うところ、背後に現れたのは、大天狗。
打ち合う音が夜の森にこだまして、その迫力に、闇夜にひそむあやかしたちも舌を巻く。
気合のこもる牛若丸の太刀筋に、さすがの大天狗もじわじわと追い詰められる。
今宵はここまで、続きは明晩。
ひらりと身をかわした大天狗は、手下を引き連れ、闇のどこかへ飛び去った。
長唄を聴くと唄と三味線の調べから情景があざやかに目の前にたち現れるのです。
二次創作小説に書いた大天狗はここからヒントを得ました。
今回の二次創作にはいろいろな長唄のイメージを入れています。
以下、曲名を列記しますので、どの場面か想像してみてくださいね。
長唄
○鞍馬山
前述のとおり
○賤の苧環
以前のブログに記載→
○二人椀久
以前のブログに記載→
○阿国歌舞伎
華やかな歌舞伎おどり一行の登場に続き阿国に「小町と少将」の道行きを舞えとのご所望あり。そこで相手役の少将に「日本一の好い男」と、名古屋山三を選んだ阿国は道行を演じながら、気づけば山三に己の憂き身を吐露していく。
○蜘蛛拍子舞
源頼光に仇せんとする葛城山の女郎蜘蛛が美しい白拍子妻菊に化けて頼光に近づき、 色仕掛けでだまそうと拍子舞を踊る。
○京鹿子娘道成寺
以前のブログに記載→
○鵺退治
源頼政に帝を悩ます物の怪を退治する勅命が下る。頼政が邪気を払うために弓の弦を鳴らす鳴弦の法を行うと、凄まじい響きとともに現れたのは、頭は猿、躰は狸、尾は蛇、手足は虎に似た鵺であった。
○小鍛治
名高い刀鍛冶の三条小鍛冶宗近が帝より刀を打つように命じられる。しめ縄を張って刀を打つ準備を整えると、稲荷明神の化身が現れて相槌を打つ。完成した刀は子狐丸と呼ばれ、後世に伝わる名刀となった。
○(番外編として)吉野山
忠信狐の登場する歌舞伎舞踊は義太夫の「吉野山」ですが、こちらは幕切れ前の花道で六方での引っ込みを使わない場合に黒御簾の長唄を使うことがあるので、ちょっとだけ長唄に関連のあるものとして入れてしまいましょう。
ちなみに前作「大海原海上決戦の場」に入れた長唄は「勧進帳」と「賤の苧環」でした。
二次創作小説「桜鬼」の冒頭の義経の笛はこちらをイメージしました。
長唄囃子方の藤舎名生さんの創作「鞍馬山」の中の義経の笛の段です。
物語を書いている間は義経と逢瀬を重ねるようでとても幸せでした。昔から歴史上のヒーロー義経が大好きでした。わたしの持つ義経のイメージは凛として高潔、真面目で堅物だけど人たらし。自分で書いていて、義経が動くのがわくわくするんです。 とくに戦闘場面を書いていると脳裏に義経の華麗で舞うような太刀捌きが見えて、ぞくぞくします。文章に上手く起こせず自分以外の方には伝わらないのですが。
義経が闇の国の宴に単身潜入したのは瓊瓊杵と木花を奪われ、弁慶をも失った自分の不甲斐なさ、自分
に対する怒りから。そんな義経の懊悩を冒頭で書きましたが、そこには実際の義経が逃避行の末、佐藤継信忠信兄弟をはじめ多くの配下を失って失意の中にいたであろうことにも思いをはせています。義経は終焉の地である奥州でずっと自分を責め続けて、心から笑うことはあったのだろうか。そう思うと転生というものが本当にあるならば、今この現代で彼が平凡な幸せの中に生きていればいいのに、と心から思います。
わたしの考えた設定では、弁慶は阿国と同じく肉体を破沙羅の世界に召喚できなかったため、魂だけが猿田彦に宿った、としています。女神稲生の力で黄泉の国から呼び戻されたのは猿田彦だけ、弁慶は猿田彦の身替わりとして黄泉の国へと下ります。
破沙羅の世界で再び弁慶を失った義経ですが、きっとその後の生の中で幾度も弁慶と巡り会えたのではないでしょうか。
そして現代に転生した義経は前世を思い出すことなく、静と恋に落ち、いっしょに破沙羅の公演を観る。 そうであればどんなにか素敵でしょうね(注:昨年書いた物語の「邂逅」は弾正と岩長姫のお話です。)
物語を書き続ける限りは彼らと再会できることが嬉しい。
前作と違って登場するキャラクターはエコヒイキしてる人ばかりなんですけど。
「脱出」の弾正さま、手から緋色の糸を出す術を使いますが、これは松本幸四郎さん主演の「阿修羅城の瞳」で幸四郎さん演じる出門が使う「緋糸しばり」です。弾正さまでやってみたかったの。
ひとつお断りが。
物語の中で岩長姫が宴席での舞を見て「ほんの小手先の芸にしか見えぬ」などとぬかしておりますが、これは話の進行上必要なことで、実際の闇の国宴の場での郡舞はとても素晴らしいと思います!
今年もわたしの妄想にお付き合い下さった皆さま、ありがとうございました。
もうネタ切れでたぶん書けません。
え、なに?寝所の場書けって?
やなこった。
では、また来年の記念日にお会いできるかどうか定かではありませんが(ネタがもうない)いつも心に破沙羅を。
再演祈願と共にこれからもずっと語り継いでまいりましょう。
謝辞
今回も予想を覆す素晴らしい絵を書いて下さったももはむ君に心からの感謝を捧げます。
前作では完全にももはむ君に一任して自由に書いて頂いた結果、とても素晴らしい作品世界を創造して頂きました。
ところが今回は攻防がありまして。
まず、大天狗の絵を頂いたのですが、ものすごい美形に書いておられて、しかも天狗ですらない(笑)
「あのう、ももはむ君、天狗で、しかもじじいなの」
「承知しました」
そしたら今度は
「琵琶法師、美形に描いていいですか?」
「あかーーーーーん!!!💢」
美形好きなのは知ってるんだけど(汗)
そんなこんなでダメ出しすること数回(笑)
掲載直前になってデータがぶっ飛ぶなどのとてつもないアクシデントを乗り越え、またしても想像も限界も超える作品をありがとうございました。
※氷艶2017破沙羅2周年記念として三日間で公演数と同じ6つのブログを掲載します。
こちらは5つめとなります。
あとひとつ、夜には破沙羅の長唄の譜面を掲載します。
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