禁煙に関する豆知識を集めてみた

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大人の禁煙トレーニングDS

それからしばらく、黙ったまま操縦していた田中さんが船を止めた。

ハンドルから離した長い指が、手持ち無沙汰なのか小刻みに動いている。

… あ。そう言えば。

「田中さん、煙草やめたんですね」

昔はヘビースモーカーだった。

火が点いてても点いてなくても、いつも煙草を指に挟んでたイメージが残ってる。

今みたいに喫煙所なんかなくて、何処の部屋でも吸ってたからか、田中さんが側に来ると必ず煙草の匂いがしてた。

それを大人だと思って憧れてたガキの頃の話だ。

「あ？」

一瞬きょとんとしたように俺の顔を見て。

それから、薄く笑って自分の指を見つめた。

「ああ、そう… 今のご時世、何処もかしこも禁煙だと。喫煙所探すのが面倒になってやめたんだよ」

「そうなんだ… 似合ってたのに」

「煙草がか？」

「大人のオトコって感じだったから」

「それでも今のお前よりずっと年下だったよ。まだまだ駆け出しで… そんな事より、下に行くか。喉も渇いたしな」

豪華な革張りのソファーに座ってぼんやりと考えた。

本当なら、聞かなきゃいけない事はたくさんある。

マネージャーに釘を刺すような事を言ったのは何故なのか。

今事務所の中で何が起こってるのか。

… 田中さんは俺をどうしたいのか。

翔くんは俺に何も心配するなと言ったけど。

ただでさえ忙しい翔くんを、これ以上俺のよく分からないゴタゴタに巻き込みたくはなかった。

心配性の翔くんは、いつも俺を気にかけるから。

自分の事は自分で何とかカタをつけないと。

でも。

ほら、と言って白ワインの入ったグラスを手渡された。

田中さんが乾杯、と言ってグラスを合わせる。

この人を疑わなきゃいけないのは、正直辛い。

「何に乾杯ですか？」

「あ？ああ… なんでもいいよ。とりあえずお前とゆっくり飲める、って事で」

この人は、こんな顔で笑う人だっただろうか。

「… ね、田中さん。俺がね、事務所辞めるって変な噂が流れたんですよ」

「ああ、知ってる」

何でもない事のようにサラリと言われた。

「俺が流したからな」

「…… 」

やっぱり。とは思わなかった。

それでもどこか頭にはあったのかも知れない。

この人が言えば Jr. の若い子たちなんか何も疑わず信じる筈だ。

本当だと思えば、他意なく噂は広まっていくだろう。

「驚かないんだな」

「… 顔に出ないタチなんです」

ふふっと笑って、面白そうに俺を見る。

「そういや子供の頃からそうだったな」

懐かしそうに目を細めて。

「… いつも一番後ろにいた。ボンヤリしてて、自分から前に出て来る事なんかなくて。誰かに引っ張られて渋々でてくるような。一目見て、面白い奴だと思ったよ」

「生意気なガキだったでしょ？」

「いや… 可愛かったよ。最初は目が綺麗な子だと思ったんだ。白目が青く見えるくらい澄んでて… 」

そう言って田中さんが俺の顎に指をかけた。

いきなり近くなった顔に、一瞬言葉を失う。

「… うん。今も綺麗だな… 変わってない」

「… そんな事ないと思う
けど」

「なあ大野」

「うん」

「俺、昨日付けで会社辞めたんだ」

「… え？」

「一緒に来ないか？」

ユメミル、デジ6(ロク) 禁煙

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