禁煙大好きコレクション
知っておきたい禁煙活用法
妄想のお話です。実在の御方々とは何ら関係ありません。BのLもOKの方、よろしければお付き合いください。
♡= side O
♡
「見て、あの人カッコいい」
「わぁ、ホント」
「お兄さんじゃない?」
「あ~、指輪してる。残念~」
隣のテーブルからそんな声が聞こえてきて、何気なく新婦の家族席を見遣る。
色白の綺麗な顔の男を見つけ、女が騒ぐのも分かる気がした。
今日は高校の同級生の結婚披露宴で、久しぶりに帰省している。
懐かしい顔もチラホラ見えて、さながら同窓会のようだ。
しかし、ジューンブライドだか何だか知らないが、梅雨時期に結婚式なんて無理することないのに。
案の定、今日も朝から雨が降っている。
主役の2人は、出会いは東京でも、出身は同じ群馬県らしい。
新郎とオレは高校からの付き合いだが、中学までは群馬にいたと言っていたっけ。
結婚することになってから、お互いの子供の頃のアルバムを見ると、川で一緒に遊んでいる写真が見つかったという。
当時の家は近所ではないし、たまたまだったようだ。
新婦は就学前に東京に引っ越し、以来25年振りに本人達の自覚無く再会した。
という一連のエピソードが再現映像で流れている。
「運命的な再会」なんてテロップが入ると、女性陣から溜息が漏れた。
全く、ただの偶然だろうに。
本人達も覚えていないようだし、運命なんて後付けでどうとでもなるもんだ。
結婚式は、平和で幸せで、ただそれだけで本当に素晴らしい。
だから、余計な演出なんていらねえのにと、いつも思う。
「智くんだよね?」
聞き覚えのあるイントネーションで名前を呼ばれる。
タバコを咥えたまま振り向くと、さっきの “綺麗なお兄さん” が、微笑んでいた。
披露宴も終わり、二次会会場への移動前に、喫煙室へやってきたところだ。
昨今の禁煙ブーム(?)で、喫煙者も随分と減り、この部屋も先客はいなかった。
「えっと…?」
何故オレを知っているのか、さっぱり分からない。
男は微笑んだまま、さっとライターを取り出すと、オレのタバコに火を点けた。
ふわりと香る品のいい香水に、思わず呼吸を深くする。
「覚えてない…?」
男が残念そうに眉を寄せるのを、申し訳ない気持ちで見つめた。
こんな美人、一度会ったら忘れないだろうに…。
「どこかでお会いしましたっけ、」
「ひどいな。結婚の約束までした仲なのに」
男の綺麗な瞳に見惚れていたら、今にも泣き出しそうな悲しげな表情に変わった。
「え?」 今、なんてった?
「ふふふ、冗談ですよ」
「え、なに?」
「タバコ、落ちますよ」
男はオレからタバコを奪うと、ゆっくりと自分の口に運ぶ。
赤く濡れた唇が開き、タバコを咥える様子が、スローモーションのように映った。
「あんた、誰…?」
丸い瞳がオレの顔を覗き込むように見つめる。
吸い込まれそうな眼力に、思わず喉がゴクリと鳴った。
「思い出したら教えてあげる」
男は愉しそうに声を立てて笑うと、オレの顎に手を掛けた。
「口開けて?」
「え?」
男の白い指が、オレの口にタバコを咥えさせる。
「またね」
至近距離でウインクされ、心臓がドクンと音を立てると、一瞬、止まった。
「え、ちょっと…」
男は笑顔で手を振って、長い足を優雅に運び、喫煙室から出ていった。
…なんだ、今の。
心臓がドクドクと鳴る中、混乱した頭で必死に記憶を手繰り寄せる。
「智くん」 と呼ぶ、あのイントネーションは、確かに聞き覚えがあった。
結局、いつどこで会ったのか思い出せないまま、男の残したタバコをぼんやりとふかす。
吸い口の少し濡れた感触に、背中がゾクッと痺れる。
赤い唇を思い出すと、あの香水が香った気がした。
—–
二次会の会場はオフィス街にある洒落たレストランだった。
午後になって雨も止み、石畳の通りに面したテラスが解放されている。
タバコが吸える場所を探したが、この店構えからすると、全面禁煙だろう。
早めに帰ることにして、大きなガラス扉を開けて中に入った。
30代同士の結婚ともなれば、参列者も既婚が目立ち、落ち着いた雰囲気だ。
奥のソファ席で、女性陣と談笑するあの男が見えた。
人目を惹く容姿だが、あえてそうしているのか、先程のようなオーラは纏っていない。
「大野、久しぶり」
声を掛けてきたのは、幼馴染の町田だった。二次会からの参加らしい。
オレが東京を離れて以来、3年ぶりの再会だ。
「元気そうだな。どうなの、漁師は」
「あはは、漁師になれりゃよかったけどな」
オレは高知でマグロ養殖のスタートアップ(起業)に携わっている。
マグロの完全養殖は、和歌山の近畿大学が有名だが、高知でも県を挙げて力を入れている。
「マグロはいつ送ってくれるの」
「お前、そればっかだな」
「それがさ、まじで。今度、店やるのよ」
「え、都内?」
「そ。高知から魚送ってもらえたら、最高だなと思って」
目利きの仲買人を紹介すると言ったら、「何のための人脈だよ」と、直接取引を打診された。
「いや、もうオレは引き揚げるから」
高知でのマグロ養殖は成功をおさめ、今年から市場への出荷も順調に始まっていた。
オレには、今回の成功を聞きつけた他企業から、転職の話が舞い込んだ。
今夏からは、東京湾での事業に携わることになっている。
「なんだよ、使えねえな」
「悪かったな」
東京湾でのプロジェクトはまだ公にはなっていない。
友人どころか家族にも詳細を話せないでいるが、親はオレが東京に戻ってくるのが嬉しいらしく、自宅にオレの部屋を用意して待っている。
30半ばを過ぎても、親にとって子供は子供らしい。
部屋が見つかるまでの間は甘えることにしたが、自宅から職場まで電車1本とはいえ、東京の西から
まで1時間以上の通勤は、さすがにしんどい。
今回の披露宴出席は、1週間の有休を取り、部屋探しも兼ねての上京だった。
「智くん」
あの香水がふわりと香ったと思ったら、いつの間にか男が隣に座っていた。
咄嗟に身構えるが、男の視線に絡め取られて、うまく身動きが取れない。
「新郎の同級生だってね?」
綺麗に微笑む顔に、つい見惚れたら、手元が狂って持っていたグラスからワインがこぼれ落ちた。
「わ、」
「ああ、大変」
白ワインの雫は、オレのスラックスと、男の靴を濡らして床に広がった。
男がすぐさまハンカチでオレの太腿を押さえる。
「ふふ、くすぐってえ」
足を触られるのは昔から苦手だ。
思わず身をよじったら、男の顔がすぐ近くにあった。
「大丈夫?」
正面から見つめられて、また心臓がドクンと鳴った。今度は時間まで止まったかのように、辺りが静まり返る。
真っ黒だと思った瞳は、奥が少し明るい色をしていた。
「…サンキュ。洗ってくるよ」
なんとか絞り出すようにそれだけ言うと、駆けつけた店員に後始末を任せ、オレは急いでトイレに向かった。
—
「足、触られるの、相変わらず苦手なんだね」
トイレの入口が開いたかと思ったら、男が入ってきた。長い脚をクロスさせて歩く様子はモデルのようだ。
「染み抜き、借りてきたよ」
男は白いシートを手に、オレの前に屈みこんだ。
「あ、おい、いいって」
「染みになっちゃうよ?」
上目遣いで見つめられて、また心臓が跳ねる。
洗面で流しっぱなしの水音と、男の上目遣いに、遠い記憶がリンクした。
川の流れる音、自分より背が低い男の子、岩場、滝つぼ…。
真夏の強烈な日差しが、フラッシュバックする。
その瞬間、目の前の男が、少年の顔に変わった。
「ショウちゃん…」
「…思い出した?」
「ウソ、」
「ふふふ、ホント。翔だよ」
「まじで、ショウちゃん!?」
(続きます)
新たな短編です えろ甘可愛い2人にしたいな

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のみ(時間禁煙も電子タバコもNG)なので最高
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